京都の文化を繋ぐ「人形司」
有職御雛人形司 大橋弌峰 伝統工芸士 大橋義之
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大橋弌峰さんを訪ねて
2016年の夏にリニューアルした店構えは、京都らしく通りに馴染んでいる。ガラス越しに並ぶ、色鮮やかな京人形がぱっと人目を引く。
ここ「大橋弌峰」は、熟練職人が製作する「雛人形」と「五月人形」の専門店なのだ。
迎えてくださったのは、初代大橋弌峰のお孫さん、伝統工芸士の大橋義之さんである。「職人気質=無口」というイメージを覆す、フレンドリーな印象だ。千本商店街の一員として通りの掃除も行なっているという。「年明けから端午の節句までは休みなしです!」と朗らかに言い放ち、取材にも快く応じていただいた。 -
京都の文化を繋ぐ「人形司」
人形作りの「職人」とは、複数のパーツから、すべて手作りで人形を仕立て上げ、作品づくりの統括をする「人形司」のこと。この日の作業場では4名が製作に励んでいた。人形司以外にも着物を縫う人、人形の頭の部分を作る人などそれぞれに役割がある。大橋さんには、「人形司」として京都・千本を舞台に受け継いできたこだわりを伺った。
「有職故実に従うことですね。実在する着物と同じ生地を使い、平安時代の公家と同じ姿形にします」
と大橋さんは言う。有職故実に従うために、どのような努力をなされたのかぜひ聞いてみたい。では、同じ姿形にするためのポイントは、どこにあるのだろう。
「手の位置です。これは、人形からいかに気品を醸し出せるかがかかっている、重要な工程です。ですから、理想の形を表現できた時は、喜びもひとしおですね。」
と満面の笑みでおっしゃった。1ミリ単位での微調整を繰り返すことに熱がこもるのは、やはり職人だからであろう。着物の生地には西陣織や草木染めが用いられており、切れ長の細い目も京人形の特徴だ。大橋さんの言葉からは「京都ならではの文化を受け継いでいる」という誇りが感じられる。 -
唯一無二の雛人形に込める想い
大橋さんによると、最近の雛祭りでは親王のみをコンパクトに飾る人が増えているという。昔は、嫁入り道具として5段、7段の雛飾りを購入する人が多くいた。少子化や核家族化によって雛人形を取り巻く環境は変化しつつある。しかし、人形司として雛人形に懸ける想いは変わらない。
「年に一度飾ることで、四季を感じてほしいです。また、人形は祖父母が魂を込めて孫へ贈る、"守り神"。家族の繋がりを大切にしながら、日本の良き伝統文化が受け継がれるよう、私たちも魂を込めて人形づくりをしています」
普段の生活の中で、当たり前のように流れていく季節。けれど、雛人形を目にすることで「今年も春が来たな」と感じることは、心に安らぎを与えてくれる気がする。
人形を通して想いを繋ぐ。そのことを伝統文化になじみの薄い若者をはじめ、多くの人に伝えるためにSNSも熱心に活用している。「Facebookを見て来ました」というお客さんも少なくない。しかし、映像や写真で作品の魅力を伝えるには限界がある。
「やはり、お店に来て人形を見てもらいたいですね。店の入り口の造りを黒い石から木に変えたことで、以前に比べてぬくもりを感じられると思います。また、戸口を拡げてガラス張りとし、中の様子がよく見えるようにしたことも、足を踏み入れてほしいという気持ちの表れです。私たちもお客さんとお話するのを楽しみにしているんですよ。それに、良い物を見ていると、自然と目が肥えますよ。良い人形の見分け方ですか?そうですね、人形を真正面ではなく斜めから眺めてみることです。そうするとね…」
人形の斜めの角度から見ること。それは私にとって新鮮な発想だった。実際に見てみると、同じ人形なのにまるで違うものを眺めているようだった。また、人形の頭の部分を作る「頭師かしだし」のお話も大変興味深い。人形の表情を作るプロフェッショナルたちの仕事に対する姿勢は「さすが」としか言いようがない。どちらも話の続きはぜひ、ご本人に聞いてみてほしい。
京都の繊細で華やかな気品を肌で感じ、伝統文化に触れる。そして、それらを生み出す人形司の想いを聴く。お店を出たらきっと誰かに話したくなる、あなたもぜひ、そんな素敵な経験を。
お店詳細情報
店舗名 | 有職御雛人形司 大橋弌峰 |
---|---|
住所 | 京都府京都市上京区尼ヶ崎横丁362 |
営業時間 | 9:00~19:00 |
電話番号 | 075‐432‐0115 |
定休日 | 第二・第四土曜、日曜日 ※年末年始は休業 年始より5月5日までは無休 |
料金 | |
座席数 | |
駐車場 | あり |
URL | http://www.ohashi-ippou.com/ |
その他 |
店舗名 | 有職御雛人形司 大橋弌峰 | 料金 | |
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住所 | 京都府京都市上京区尼ヶ崎横丁362 | 座席数 | |
営業時間 | 9:00~19:00 | 駐車場 | あり |
電話番号 | 075‐432‐0115 | URL | http://www.ohashi-ippou.com/ |
定休日 | 第二・第四土曜、日曜日 ※年末年始は休業 年始より5月5日までは無休 | その他 |